もっと知りたい!犬の歯周病
歯周病は、「歯肉炎」や「歯周炎」など、歯とその周辺の炎症の総称です。
口腔内の疾患ですが他の臓器にも影響を及ぼすことがわかっています。
歯周病の原因は?
歯周病は、歯垢の中に潜む歯周病菌が出す毒素などによって、歯の周りの組織に炎症が起こる病気です。
歯垢は食べかすなどをエサにして増えた細菌のかたまりで、唾液成分の糖タンパク質が歯に付着しぺクリルという層をつくり、ここに口の中の細菌が集まって増えていくと歯垢となります。細菌がさらに増え、くっつき合うことで歯垢はどんどん大きく成長していき、成熟するとバイオフィルムという要塞を作ります。

歯石って?
歯石は、唾液の中に含まれるカルシウムやリン酸が歯垢の中に少しずつ溜まり、細菌の死骸と一緒に石のように固まった(石灰化した)ものです。
歯石の中の細菌は死んでいるため、炎症には直接かかわりませんが、歯石の表面はデコボコしているため、新たな歯垢がつきやすい状態になります。付着した歯垢が再び石灰化することで歯石が成長し、歯の周りの組織に悪影響を与えてしまうのです。

歯周病のメカニズム
歯周病は初期の歯肉炎からはじまり、放っておくと歯の周りの組織に炎症が進み歯周炎へと進行していきます。
- 健康な状態
- 歯は歯垢や歯石がなくきれいな白色。
歯肉はきれいなピンク色をしています。 - 歯垢がつく
- 食べかすなどを取り除けないと、歯垢がつきはじめます。
歯垢は歯ブラシや歯みがきシートなどでこすり落とすことで除去できます。 - 歯石がつく
- 歯垢が石灰化し、歯石となります。
歯石は歯ブラシや歯みがきシートではこすり落とすことができず、動物病院で専門の処置が必要です。 - 歯肉炎
- 歯垢や歯石が付着し、歯と歯肉の境目部分が赤く腫れてきます。歯ブラシなどの刺激で歯肉から出血が見られる場合があります。
(写真提供:フジタ動物病院) - 歯周炎
- 歯の表面を覆うように歯垢や歯石が付着し、歯肉が盛り上がるように赤く腫れます。膿がたまったり、歯がグラグラして抜けてしまう場合も。
(写真提供:フジタ動物病院) - あごの骨が折れる・外歯瘻など
- 歯周病が悪化すると、あごの骨が腐り周囲が化膿したり、あごの骨折を引き起こすケースもあります。
(写真提供:フジタ動物病院) - 心臓や腎臓など全身へ
- 歯周病菌が血流にのって全身に回り、心臓や腎臓などにも悪影響をもたらす場合もあります。
歯周病の主な症状は?
ステージによって症状が変わります。はじめはほぼ自覚症状がありませんが、進行すると下記のような症状が見られます。
- 口臭がきつくなる
- 歯が抜ける
- 歯肉の赤みや腫れ
- よだれが増える
- 歯肉の出血
- 頬から膿が出る
- 痛みによる食欲低下
- 下あごの骨折
- 歯がグラグラする

歯周病の治療法は?
歯周病菌の温床となる歯垢や歯石を除去することが1つです。
レントゲン検査で、歯根やあごの骨の状態などを確認し、原則麻酔下でスケーリングを行い、歯の表面の他、歯周ポケットに蓄積された歯垢や歯石を除去します。
重度の歯周病で、歯を残すことが困難となった場合は抜歯が必要となります。
また、症状に応じて、炎症を抑える薬や痛みを抑える薬の服用も行います。